文化服装学院のサークル活動から始まったUndercoverが、なぜ世界のアーカイブ市場で突出した評価を受けるのか。高橋盾の世界観と、コレクターが狙うべきシーズンを解説する。
原宿から世界へ
1990年、文化服装学院の学生だった高橋盾(Jun Takahashi)はサークル活動としてUndercoverを立ち上げた。最初の販売場所は原宿の歩行者天国、通称「ホコ天」。スプレーペンキとDIY精神で作られた服が、数百円から数千円で売られた。
あれから35年。Undercoverのコレクションはパリでプレゼンされ、Supreme、Nike、NIGO、Jun Watanabeとのコラボレーションは世界中でハイプを生む。しかし高橋盾の服の核心は変わっていない。**「美しいものの中の恐怖、恐ろしいものの中の美しさ」**を探すこと。
グランジ、パンク、そして東京
初期のUndercoverは西洋のオルタナカルチャーへの深い愛着から出発している。Kurt Cobainのグランジ美学、Sex Pistolsのパンクの破壊衝動、Sonic Youthのノイズと詩情。これらが東京の若者文化のフィルターを通して再解釈され、唯一無二のテイストを持つ服として生まれた。
特に1990年代後半〜2000年代前半のシーズンは、この「東京経由の西洋オルタナ」が最も純粋な形で表現されており、コレクターからの需要が集中するゾーンだ。
コレクターが注目する三大シーズン
「But Beautiful」シリーズ(2000年代) シーズンタイトルに「But Beautiful」を冠したシーズン群は、Undercoverの哲学が最も洗練された形で表現されている。解体されたスーツにグラフィックを重ね、柔らかな素材とハードなモチーフが共存する。このシリーズのアーカイブは世界規模で高値が続いている。
「Scab」(2001年SS) ファッションウィーク未参加の時代に作られたこのコレクションは、パンクと日本の職人仕事が奇妙に共存する傑作。パーカのグラフィックは現在でも驚くほどフレッシュに見える。
「We Are Born to Love and Hate Each Other」(2016年SS) パリデビュー後の成熟期にあたり、テイラリングとパンク精神が高次元で融合した。グレンチェックのスーツに刺繍とプリントが重なる複雑な表層が、現代のコレクターに特に好まれる。
高橋盾のコラボレーション哲学
Undercoverのコラボレーション戦略は独特だ。単なるロゴの掛け合わせではなく、相手のブランドや人物との本質的な会話から生まれる。
Nikeとのコラボで生まれた「Undercover x Nike Daybreak」や「React Element 87」は、単なるスニーカーコラボを超えて、双方のブランドの哲学を新しい文法で語り直した。Supreme、Human Made(NIGO)との協業も同様だ。
コラボアイテムのコレクター価値は発売時のハイプとは独立して存在し、10年後も安定した評価を受けることが多い。特にNikeコラボの一部は発売価格の5〜10倍での流通が常態化している。
実着とコレクション
Undercoverのアーカイブが他の高額アーカイブと異なるのは、実際に着られることへの強いこだわりが服に宿っている点だ。どれほどコンセプチュアルなシーズンでも、縫製の丁寧さと素材の実用性は担保されている。
コレクターとして保存するもよし、街へ着て出るもよし。この両立こそが、Undercoverを世界中のファッション好きが「自分のブランド」として感じる理由だ。
高橋盾は今日もその両義性を縫い続けている。美しくあり、恐ろしくあること。