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Margiela タビブーツ ─ 足袋から生まれたアイコンの35年史

Digr. 編集部

日本の伝統的な足袋からインスピレーションを受けたMartin Margielaのタビシューズは、デビューコレクションから35年以上経った今も新作が作られ続ける。なぜこのシルエットはこれほど普遍的なのか。

1988年の衝撃

Martin Margielaがメゾンのデビューコレクションを発表した1988年、最も語られたのはタビシューズだった。つま先が二股に分かれた、一見奇妙なシルエット。会場のモデルは素足の指が見えるように赤く塗られ、そこにこのシューズが履かれた。

会場はシャトー・デュ・ロワという廃墟と化した社交場。招待客は子供たちに混じって座り、廃材の椅子に腰を下ろした。すべてが「ファッションショー」の文法を解体するためのステージだったが、その中でタビシューズだけが、静かに存在感を放っていた。


足袋という起源

Martin Margielaが参照したのは日本の伝統的な作業着「足袋」だ。農作業や伝統工芸の現場で使われる、指先が分かれた靴下型のフットウェア。機能的な理由から生まれたこの形状が、Margielaの目には「人間の足が持つ本来の形」として映った。

一般的な靴は5本の指をひとまとめにし、足の自然な形を均一な塊として扱う。タビシューズは親指とそれ以外の4指を分けることで、足が本来持つ二元的な構造を可視化する。それはMargielaが服全体で行っていた「当たり前を問い直す」という実践の、靴版だった。


シルエットの普遍性

なぜタビシューズは35年以上作り続けられているのか。答えはシルエットの完成度にある。

あの二股のつま先は、足元に独特の「引力」を与える。どんなにミニマルなコーディネートでも、タビを足元に置いた瞬間に視線が下に落ちる。足元がコーデの主役になる。これは通常のシューズデザインでは到達しにくい効果だ。

また、ヒールの高さ・素材・カラーを変えることで無限のバリエーションが生まれる一方、すべてが同じ「タビ」として認識される統一感がある。これはアイコニックなシルエットが持つ特権的な性質だ。


アーカイブとしてのタビ

コレクターとしてタビシューズを見るとき、以下の観点が重要だ。

素材と年代 ── 初期(1988〜1990年代前半)のタビはカーフレザーが主体で、現行品とは革の質感が明らかに異なる。経年によって革が体に馴染んだビンテージタビは、新品では決して再現できない柔らかさを持つ。

ヒール形状 ── スタッキングヒール(積み重ね式ヒール)、スティレット、フラット、ブロックヒールなど、ヒール形状のバリエーションは年代によって異なり、希少なバリエーションは通常の3〜5倍の相場になることがある。

コラボレーションモデル ── メゾン在籍時代のMartin自身が監修したコラボモデルと、退任後(2009年〜)のコラボモデルでは市場での評価が大きく異なる。

サイズとコンディション ── タビはアーカイブシューズの中でもサイズ展開の偏りが大きく、大きめのサイズは希少性が増す。つま先の二股部分の割れや、ヒール底の摩耗が主なコンディションチェックポイント。


現代における意味

2020年代、タビシューズは若い世代のスタイリストや着用者によって再発見され続けている。その理由は「奇抜さ」ではなく「異なる視点からの合理性」に気づく人が増えているからだと思う。

Margielaが35年前に見ていたもの ── 足の本来の形、機能から生まれた美しさ ── は、今の時代にこそよく見える。

タビを履くとき、あなたの足は初めて「足らしく」なる。

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