マドンナのコーンブラ、スカートを穿く男、ストライプとレザーの奇妙な結婚。Jean Paul Gaultierはジェンダーの「当たり前」を服で解体した。その笑いと毒の遺産を振り返る。
少年とテディベアのコルセット
Jean Paul Gaultierは子供の頃、祖母が着けていたコルセットに夢中だった。コルセットを着た祖母の身体の変容 ── それが彼の服作りの最初のインスピレーションだったという。
1976年にブランドを立ち上げたとき、Gaultierは22歳だった。師であるPierre Cardinのアトリエで磨いた技術と、ストリートカルチャーへの愛着、そして誰も想像しないような組み合わせへの本能的な興味 ── これらが混ざり合い、「ファッションの悪童」というイメージを作り上げた。
マドンナとコーンブラ
1990年のマドンナ「Blond Ambition」ワールドツアー。ピンク色のコルセットとコーンシェイプのブラジャーを組み合わせたアウターウェアとして機能するコルセットドレスは、ポップカルチャーと現代ファッション史の交差点に位置するアイコニックな作品だ。
内側に着るものを外側へ。女性の「秘めるべき」とされてきた部分を最も前面に押し出す。これはフェミニズム的な宣言であると同時に、Gaultierのデザイン言語の核心だった。下着が服になるとき、道徳の前提が崩れる。
メンズスカートという挑戦
1984年、Gaultierはメンズコレクションにスカートを導入した。当時のプレスと批評家の反応は予想通り分かれたが、Gaultierは意に介さなかった。
「なぜ男性がスカートを穿いてはいけないのか、合理的な理由を教えてほしい」という彼の問いは、今読んでも鋭い。30年後に多くのデザイナーがジェンダーレスウェアを論じるようになった世界で、Gaultierのメンズスカートは先駆的だったことが明らかだ。
マリニエールとブルトンシャツ
フランスの漁師が着ていたボーダーシャツ「マリニエール」は、Gaultierによってファッションのアイコンとなった。本来は機能的な作業着だったマリニエールを、シルクやリネンで仕立て直し、コルセットやレザーと組み合わせる。
ストリートとクチュールの境界線を消す。高貴と卑俗を同じ服の上で踊らせる。これがGaultierのもう一つの本質だ。
アーカイブとしての価値
マドンナ関連コレクション(1990〜1992年) ── コーンブラ周辺のコルセットラインは最も高いコレクター需要を持つ。オリジナルの製造枚数が少なく、状態の良いものは博物館・美術館クラスの価値を持つこともある。
メンズコレクション(1980〜1990年代) ── Gaultierのジェンダー実験が最も先鋭的だった時代。スカートとシャツのセットアップ、非対称なカットのジャケットは現代のノンバイナリートレンドとも共鳴する。
ストライプアイテム ── マリニエールを基調とした作品群は着用実用性が高く、入門としても最適。1990年代のオリジナルと現代復刻版では素材の質感が異なる。
Gaultierは笑いながら革命を起こした。最も恐ろしい革命家は、怒らない人間だ。