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Issey Miyake Pleats Please ─ 永遠に「新しい」服の正体

Digr. 編集部

1993年にローンチされたPleats Pleaseは、「プリーツは戻ってこない」という常識を30年以上かけて覆した。三宅一生が生涯をかけて追求した「一枚の布」という問いへの、最も民主的な回答。

「着心地」を設計すること

三宅一生のキャリアを貫く問いは一つだ。「人間の身体と布はどのような関係を持てるか」。

パリのデザインスクールを卒業後、Givenchy、Guy LarochéのアトリエでテクニカルなクチュールのABCを身に着けた三宅は、しかしそこで満足しなかった。高度な技術で身体を「理想形」に矯正するクチュールの手法ではなく、布が身体の動きに従い、身体が布と共に動く服を作りたかった。

1970年の「A Piece of Cloth(一枚の布)」というコンセプトは、その問いへの最初の回答だった。一枚の布が最も自然に身体を覆う形 ── それを追求した結果が、30年後のPleats Pleaseに結実する。


プリーツという技術革命

1993年にスタートしたPleats Pleaseのプリーツ加工は、既成概念を覆す製法によって生まれる。

通常の服作りでは、先に型紙通りに布を裁断し縫製してから完成させる。Pleats Pleaseは逆だ。仕上がりの2〜3倍の大きさで服を縫製し、その後プリーツプレス機でひだを形成する。素材はポリエステルマイクロファイバー。熱によって形状記憶されたプリーツは、洗濯しても型崩れせず、旅行中に丸めてバッグに入れても取り出した瞬間に元に戻る。

この加工技術は現在も三宅のアトリエが独自に保有しており、完全な複製は他社には不可能だ。


「皺が美しい」という革命

ファッション史において「皺のない服」は長らく品質の証明とされてきた。アイロンをかけた白シャツ、糊の効いたシャツカラー、プレスの利いたスラックス。

Pleats Pleaseはこの価値観を180度転換させた。プリーツの「皺」は欠陥ではなく、デザインの主役だ。布が動くたびに変化するひだの表情は、着用者の動きと光によって無限の変奏を見せる。それは彫刻が角度によって異なる表情を持つことに似ている。


カラーとコレクターバリュー

Pleats Pleaseはシーズンごとに独特のカラーパレットを展開し、一部のカラーは数シーズンしか生産されなかった。

1990年代の初期カラー ── 特に初期5〜6シーズンの深みのある色味(深緑、モスグリーン、バーガンディなど)は現行品と明確に発色が異なる。経年変化により「育った」感があり、コレクターには好まれる。

Issey Miyake本人監修コラボシーズン ── 特定のアーティストとのコラボシーズンは希少性が高い。

サイズ4(最大サイズ) ── Pleats Pleaseはサイズ1〜5の展開だが、大きいサイズほど流通量が少なく、特定カラーの大きいサイズは市場でも希少。


アーカイブの実用性

Pleats Pleaseは「コレクターのアーカイブ」としては珍しい存在だ。コレクションとして保存価値が高いと同時に、実際に着て使えることが前提のデザインだから。

洗濯機で洗える、丸めて収納できる、サイズを選ばない。これほど実用的でありながら、これほど美しい服は多くない。その意味でPleats Pleaseは、三宅一生の「民主的なデザイン」という哲学の最も完璧な実現形だ。

三宅は言った ── 「服は人のために存在する。それだけだ」。Pleats Pleaseはその言葉の服だ。

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