50年以上にわたり、川久保玲はファッションに問いを投げかけ続けている。答えを出すためではなく、問い自体が服の形をとるために。そのラディカルな実践の軌跡をたどる。
「美しくなくていい」という革命
1969年、東京でComme des Garçonsを立ち上げた川久保玲は、最初から別の言語を話していた。彼女の服は「美しく見せる」ためのものではなく、「美しさとは何か」を問うためのものだった。
1981年のパリデビューで世界が受けた衝撃は、山本耀司と並んで現代ファッション史の転換点として記録されている。だが川久保がもたらしたものは、山本とも異なる。山本が「喪失の美」を語るとすれば、川久保が語るのは**「カテゴリーの解体」**だ。
女性のための服か男性のための服か。きれいな服かそうでないか。完成した服か未完成の服か。川久保のコレクションはいつも、これらの二項対立を無効にする。
コレクションの核心
1997年春夏「Dress Meets Body, Body Meets Dress」
通称「こぶドレス」コレクション。身体の「正常な」ラインを意図的に歪める詰め物が施されたドレスは、ファッション業界全体に激震を走らせた。美的規範に従わない身体を肯定するのか、それとも身体の脆弱性を可視化しているのか ── 解釈は今も分かれる。このシーズンのピースは現在、世界の一流美術館のコレクションに収蔵されている。
2012年秋冬「White Drama」
すべて白。過剰な白。まるでウェディングドレスのパロディのように積み重ねられた白は、「純潔」「清純」というコードをユーモアと暴力の双方で解体する。川久保の軽さと重さが同居した傑作シーズン。
ブランドの宇宙
Comme des Garçonsが特異なのは、デザイナーとしての川久保だけでなく、組織としてのComme des Garçonsが一つの思想体系を形成している点だ。
Dover Street Market(世界各都市のコンセプトストア)、Comme des Garçons PlayからJunya Watanabeまで多数のサブラインの展開、アーティストや音楽との継続的なコラボレーション ── これらはすべて、「服を中心に置きながら服を超えた何かを構築する」という川久保の一貫した意志の表れだ。
アーカイブコレクターの視点
川久保のアーカイブで最も価値が高いのは、以下のいずれかに該当するピースだ:
- コンセプトが明確に物体化されたもの ── こぶドレスのような「見ただけで何かを考えさせる」ピース
- 素材への実験が際立つもの ── レーザーカット、不織布、和紙など、布帛の概念を揺さぶる素材を用いたもの
- コラボレーション作品 ── 特にJunya Watanabe初期シーズン、Dior Homme(Hedi Slimane期)とのコラボは希少性が高い
コンディション評価で注意すべきは、川久保のピースは「ダメージがあること」が意図的なデザインである場合が多い点だ。素人目には「破れている」ように見えるものが、実はオリジナルのデザインであることを確認してから価値判断する必要がある。
問いを持ち続けること
川久保玲は80代を迎えた現在もコレクションを発表し続けている。それぞれのシーズンが前シーズンとはまったく異なり、それでいてすべてが同じ問いから生まれている。
「服とは何か。美しさとは何か。人間とは何か」。
その問いに服が答えを出さないことが、Comme des Garçonsをコレクタブルにしているのかもしれない。答えのない問いは、永遠に新しい。